行きつけの歯科医院から、定期的に歯の検診の案内ハガキが届くことが多いと思います。
歯と歯茎の状態は何年も同じではなく、食生活や生活環境、体調等によって変化していきます。
歯の検診はクルマの定期点検のようなものですから、歯医者さんで定期検診と治療を受けることで、口臭予防にも繋がります。
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口臭の原因の1つ「歯周病」
日本人の成人の約80%が歯周病(歯槽膿漏)にかかっていると言われます。歯周病はサイレント・ディジーズ(Silent Disease)とも言われ、静かに進行する病気。
初期の歯肉炎の段階では自覚症状があまり無く、その後、じわじわと年数をかけて歯周病が進行していくケースが多いようです。
歯周病の治療
いざ、歯科医院で歯周病(歯槽膿漏)と診断されたら、平静でいられる人は少ないと思います。
歯周病の怖さは、毎日きちんとブラッシングしてプラーク・コントロールしても、正常な状態に戻すことができないところです。
よって、歯周病の進行を抑えることが治療の1つ。
歯周病と診断された以上、歯医者さんの歯科医師のアドバイスに耳を傾けて、具体的な治療は専門医に相談しながら進めていきます。
なお、歯周病は歯医者さんに全て任せて治療できるわけではありません。歯周病治療の中で、自分でできることは自分で対応していきます。
口内環境を整えるために、毎日の正しいブラッシングが基本です。喫煙者でしたらタバコの本数を減らす、あるいは思い切って禁煙するいい機会かもしれません。
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歯周病の原因
歯肉炎は10代に多く、20歳前後を境に歯周炎の患者が増えていきます。歯周病(歯槽膿漏)は細菌の感染症。
歯周病を引き起こす原因はプラーク(歯垢)ですから、毎日の正しいブラッシングによるプラーク・コントロールが基本です。
歯周病の原因は他に、ストレス、生活習慣、喫煙、全身疾患(糖尿病)、肥満が関係しているとされます。歯は体の一部ながら、全身と深い関係があることが分かります。
歯周病の原因-ストレスに注目
当ウェブは歯周病(歯槽膿漏)の複数の原因の中で「ストレス」に注目しています。何故なら、歯周病患者の中で、このような方がいます。
・毎日、3回以上の正しいブラッシング
・定期的に歯科医院で検診とクリーニング治療を受けている
・健康
このような方でも、歯周病が進行していくことがあります。
きちんと歯の手入れをしているのに、何故でしょう?
誰でも、長時間労働が続いたり、仕事や生活環境の中で強いストレスを受けていると、歯茎が赤くなったり腫れることがあります。歯ブラシで歯を磨いていて、誰でも、何か違和感や痛みを感じた経験があると思います。あるいは歯茎から出血することもあります。
ストレスは人体の免疫機能と大きな関係があります。ここに歯周病との関係がありそうです。
人の免疫力
「自律神経」という言葉を聞いたことがあると思います。
この自律神経とは、人間の体を構成している60兆個の細胞をコントロールしている神経です。呼吸、心拍、血圧、体温等は自律神経によってコントロールされています。
私たちの体は自律神経によって「交感神経」と「副交感神経」のバランスが保たれています。これは、恒常性(ホメオスタシス:homeostasis)と呼ばれるもので、私たちの体にとって大切な役割を果たしています。
交感神経が優位
交感神経が優位の時は心身ともに緊張状態で血糖値が上昇します。そして、体温も上昇します。
これは、言わば車のアクセルペダルを踏んでいるような時。頑張っていたり、興奮している状態です。
副交感神経が優位
副交感神経が優位の時は心身ともにゆったりしていて体温が低下します。この時、食欲や睡眠欲が高まります。これは、リラックスしている状態。
この「交感神経」と「副交感神経」のバランスを崩してしまうのがストレス。
私たちはストレスを受けると、交感神経優位の状態に傾いて、血圧が上がります。
この状態が長く続くと、免疫力が正常に作用しなくなり、粘膜や組織に障害が出てくるようになります。
免疫力の働き
私たちの体に備わっている免疫力は血液の中の白血球が担っています。白血球は3つに分けることができます。
(1)顆粒球(白血球の約60%)
例えば、ケガをして皮膚から出血した時、顆粒球は細菌の侵入を防ぎます。顆粒球の役目が終わると、膿(うみ)となります。
→ 交感神経が優位の時、顆粒球の割合が高くなる。
(2)リンパ球(白血球の約35%)
リンパ球はウイルスに対応します。リンパ球にはT細胞、B細胞、NK細胞等さまざま。この3つの細胞が外敵に対して攻撃します。この働きが免疫機能です。
→ 副交感神経が優位の時、リンパ球の割合が高くなる。
(3)マクロファージ(白血球の5%)
マクロファージは外敵を丸吞みして、インターフェロンを放出しながら全身に広がります。このインターフェロンはウイルス感染の阻止作用を持っています。
ストレスと顆粒球の関係
人は長い間、ストレスを受け続けていると交感神経が優位となり、白血球の中の顆粒球が増えていきます。
↓
顆粒球が増えると、リンパ球の数が減っていきます。
↓
リンパ球の数が減ると、免疫力が低下します。
↓
顆粒球が増えることで、
1.常在菌と戦って化膿し、炎症を起こしやすくなる性質があります。
2.細菌がいない場所では、組織破壊の炎症を起こします。
3. 歯周病(歯槽膿漏)に
まとめますと、
「ストレス」
↓
「交感神経の緊張」
↓
「組織破壊」
↓
「歯周病(歯槽膿漏)」
歯周病や胃潰瘍、痔疾などは粘膜が破壊されて炎症になる病気です。また、交感神経が過度に緊張していると、血流が悪くなるため、更に組織破壊が進むようです。
100年に1回の大発見、免疫革命
免疫革命で有名な故・安保徹先生(新潟大学大学院歯学部教授)は免疫学の世界的な権威。先生は、今まで謎に包まれていた、あらゆる病気の原因とメカニズムを解明してきました。
これは、100年に1度の大発見とも言われています。安保先生の文献は100冊近く、講演活動も積極的でした。
安保先生の文献の中に書かれている内容は一貫してストレスと免疫機能の関係。
社会の中で、誰もが多かれ少なかれストレスを受けています。生活の中で、幾多の困難に直面し、それを乗り越えていく必要性に迫られることがあります。その時、人は無理をしています。人は無理をしても、ある程度は耐えることができます。
しかし、生身の人間である以上、どこかで限界を迎えます。
強いストレスを受け続けると、自律神経のバランスが崩れて、交感神経が優位の状態になります。これが、白血球の中の顆粒球を増やし、あらゆる病気の原因になっています。
そこで、交感神経が優位な状態から副交感神経が優位になるように心掛ける必要があります。
ストレス社会の中でONとOFFを切り替えて、ストレスを上手に解消しながら、ストレスを溜めないような生活を考え直してみたいものです。
リラクゼーションのすすめ
ストレス解消法は人それぞれ。
それらの中で、ストレス解消法が自分にとってストレスになってしまったら意味がありません。
ストレス解消とダイエットを兼ねてウォーキングと軽いジョキングを組み合わせると、気分がスッキリします。しかし、それらが自分に対する課題のようになってしまうと、それがストレスになってしまいます。
副交感神経が優位になるような、自分に合ったストレス解消法を見つけることで、歯周病の治療、そして口臭予防にも結び付くかもしれません。
静的リラクゼーション
・半身浴
・音楽鑑賞
・映画鑑賞
・趣味
・睡眠
・森林浴
・マッサージ
動的リラクゼーション
・適度な運動
・カラオケ
・ショッピング
・会食や飲み会
・旅行
・おしゃべり
副交感神経を優位に
他にも、人それぞれストレス解消法はたくさんあることでしょう。
これらの中で、食事や入浴は手軽に「副交感神経を優位にできる」方法。体にいい食事をして入浴すると、心身ともにリラックスモードに浸ることができます。
食事の中で玄米や野菜、きのこを食べることで、副交感神経を刺激できる一番簡単な方法です。玄米を発芽させて、 柔らかく炊ける炊飯器がありますから、食生活を改善するのも一つの方法でしょう。
ストレスの解消が上手ではない人も多いと思います。また、どうしていいのか分からない人も多いことでしょう。特に性格的に生真面目で責任感が強く、几帳面な人がいたら、周囲からのアドバイスが必要なのかもしれません。
ストレスを溜めないで、時には「まあ~、いいか」といった、ゆる~い考え方も必要なのかもしれませんね。
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(参考文献) 免疫革命[著]安保徹 講談社インターナショナル